
強いチームを作る3つの原則
社長、皆さんの会社は今、どんな雰囲気ですか?
社員同士が頻繁に目を合わせ、楽しそうに短い言葉を交わし、誰かが話せば皆が真剣に耳を傾ける。
あちこちで笑い声が聞こえ、「ありがとう」という言葉が自然に飛び交う。
もし、「うちの会社もこうなったらいいな」と思われるなら、ぜひこの先を読み進めてください。
実は、このような「強いチーム」を作るのに、特別な才能や難しい理論は必要ありません。
大切なのは、たった3つのシンプルな原則です。
原則1:サーカスの安全ネットを張る(安全な環境づくり)
強いチームづくりの出発点は、「ここは安心して自分らしくいられる場所だ」と、社員全員が心から感じられる環境を整えることです。
これを「心理的安全性」と呼んだりもしますが、難しく考える必要はありません。
たとえるなら、サーカスの綱渡りの下に張られている「安全ネット」のようなものです。
もしネットがなければ、誰もが怖くて一歩も前に進めませんよね。
でも、「万が一落ちても、このネットが受け止めてくれる」という安心感があるからこそ、思い切って技に挑戦できるのです。
会社も同じです。
- 「こんな基本的なことを質問したら、馬鹿だと思われるかな…」
- 「反対意見を言ったら、上司に睨まれるかもしれない…」
- 「失敗したら、すごく怒られるだろうな…」
社員がこんな不安を抱えていては、本来持っている力の半分も出せません。
では、どうすれば「安全ネット」を張れるのでしょうか? 鍵を握るのは、社長、あなたです。
まずは、聞き役に徹すること。
それも、「ちょっと聞きすぎかな?」と思うくらい、社員の話に耳を傾けてください。
社員が話している間は、自分の意見を言いたいのをグッとこらえ、ひたすら頷き、質問を重ねます。
「へえ、それで?」「もう少し詳しく教えてくれる?」と。
社長が主役になる必要は全くありません。
社長が真剣に話を聞いてくれる。
否定せずに受け止めてくれる。
この経験が、社員の中に「この場所でなら、本音を話しても大丈夫だ」という信頼感を育み、「自分はこのチームの一員なんだ」という強い仲間意識(帰属意識)へとつながっていきます。
この仲間意識こそが、チームの力を最大限に引き出すエンジンのようなものなのです。
原則2:社長の「弱点」は、チームの「伸びしろ」(弱さの開示)
「リーダーは強くあるべきだ」と思っていませんか?
実は、強いチームを作るリーダーは、必ずしも完璧なスーパーマンではありません。
むしろ、自分の弱さや苦手なことを、素直に認め、さらけ出せる人です。
人間には、自分の弱点を隠したいという本能があります。
しかし、考えてみてください。
そもそも、なぜ私たちは一人ではなくチームで仕事をするのでしょうか?
それは、一人ひとりが不完全で、得意なこともあれば苦手なこともあるからです。
全員が何でもできる完璧な人間なら、チームなんて必要ありませんよね。
チームの目的は、お互いの得意なことで助け合い、苦手なことを補い合うことにあります。
たとえるなら、戦隊ヒーローのようなものです。
レッドはリーダーシップがあるけど、ちょっと短気。
ブルーは頭脳派だけど、体力がない。
イエローは力持ちだけど、細かい作業は苦手。
それぞれが自分の役割を果たすからこそ、強大な敵に立ち向かえるのです。
社長がもし、「実は、俺、パソコン作業が本当に苦手でね…誰か得意な人、助けてくれないか?」と正直に言ったとします。
すると、社員はどう思うでしょうか。
「なんだ、社長も完璧じゃないんだ」と安心し、パソコンが得意な社員は「そこは任せてください!」と、喜んで力を貸してくれるはずです。
社長が先に心の鎧を脱ぎ捨てることで、社員も安心して自分の弱さを見せられるようになります。
「自分は人前で話すのが苦手なので、資料作りで貢献します」といったように、自然な協力体制が生まれるのです。これが、本来のチームの姿です。
原則3:目指すは「あの丘」でいい(共通の目標)
安心して挑戦でき、お互いに助け合えるチームができたとして、最後に必要なものがもう一つあります。
それは、「みんなでどこに向かうのか」という、分かりやすい共通の目標です。
ただし、これも「業界No.1を目指す!」といった壮大で斬新なものである必要はありません。
たとえば、皆でハイキングに行くところを想像してみてください。
「さあ、出発だ!」と言っても、どの山に登るのか、頂上で何をするのかが決まっていなければ、皆バラバラの方向に歩き出してしまいます。
大切なのは、「あそこの丘の頂上まで登って、みんなでお弁当を食べよう!」というように、誰にでも分かる具体的な目的地と、そこでの楽しいイメージを共有することです。
レストランなら、「お客様に『また来たいね』と思っていただける、居心地のいい空間をつくる」で十分です。
大切なのは、そのために「私たちは何を一番大事にするのか?」という優先順位が、社員全員の腹に落ちていることです。
「味なのか?接客の速さなのか?それとも、お客様との会話なのか?」がハッキリしていれば、日々の仕事で迷うことがなくなります。
まとめ:強いチームは「文化」が作る
「安全な環境」「弱さの開示」「共通の目標」
この3つの条件がそろうと、チームには自然と冒頭で紹介したような素晴らしい光景が生まれます。
- お互いの距離が近くなり、自然と輪になって話す。
- アイコンタクトが増え、短い言葉でも心が通じ合う。
- 誰もが遠慮なく質問し、ユーモアと笑いが絶えない。
- そして、「ありがとう」という感謝の言葉が、当たり前のように交わされる。
これらは、小手先のテクニックではなく、お互いを一人の人間として尊重し、信頼するという、いたってシンプルで温かい人間観から生まれる「文化」なのです。
まずは社長から、「いつもありがとう」と感謝を伝え、「ちょっと助けてほしいんだけど」と弱さを見せることから始めてみませんか?
その一言が、会社を「最強のチーム」に変える、大きな一歩になるはずです。