利益も、チームも、整える。  浜松市の税理士 小林徹が、次の一手まで一緒に考えます。

口べたな社長でも大丈夫。どんなやり方の社長にも欠かせない「たった一つの役目」

口べたな社長でも大丈夫。どんなやり方の社長にも欠かせない「たった一つの役目」

引っ張る社長も、聞く社長も。どんな社長にも欠かせない、たった一つの役目

「自分はリーダーに向いていない」と感じたことはありませんか

「自分は、人を引っ張るタイプじゃないんです」

経営者の方とお話ししていると、この言葉を耳にすることがあります。

声が大きく、決断が早く、みんなをぐいぐい引っ張っていく。
そんな社長の姿を思い浮かべて、自分はそうなれないと感じている方は少なくないようです。

書店に行けば、リーダーシップ(人をまとめ、目標に向かって動かしていく力)についての本がたくさん並んでいます。
引っ張るやり方、寄り添うやり方、任せるやり方。
読めば読むほど「結局、自分はどれを目指せばいいのか」と迷ってしまう方もいるのではないでしょうか。

けれども、やり方の違いよりも、もっと大切なことがあると考えられます。
それは、どんなやり方の社長であっても、必ず果たさなければならない「一つの役目」です。

この記事では、その役目とは何か、なぜ小さな会社ほどそこでつまずきやすいのか、そして明日から何ができるのかを、一緒に考えていきたいと思います。

社長のやり方は、一人ひとり違っていい

先頭に立って「こっちへ行くぞ」と旗を振る社長がいます。

社員の話をじっくり聞き、みんなの考えをまとめていく社長もいます。

口数は少なくても、誰よりも丁寧な仕事ぶりで背中を見せる社長もいます。

どれが正しくて、どれが間違いということはありません。

料理にたとえるなら、強火で一気に仕上げる人もいれば、弱火でじっくり煮込む人もいる、というようなものです。
火加減はそれぞれでも、おいしい料理はちゃんとできあがります。

会社の状況によっても、合うやり方は変わります。
立ち上げたばかりで、社長が何でも決める時期もあるでしょう。
社員が育ってきて、少しずつ任せていく時期もあります。
急な事故や故障の場面では、話し合うより社長がすぐ決めたほうがよいこともあります。

ですから、「自分は引っ張るタイプじゃない」と落ち込む必要はないのではないでしょうか。
あなたにはあなたの火加減があります。無理に誰かのまねをしても、どこかで息切れしてしまうものです。

ただし、ここで一つだけ見落としてはいけないことがあります。

それでも、どんな社長にも欠かせない「たった一つの役目」

火加減は自由でも、「何を作るのか」が決まっていなければ、料理は始まりません。
会社でいえば、「私たちは、どこへ向かっているのか」という行き先のことです。

社長のいちばん大切な役目は、この行き先を、みんながわかる言葉にすることです。
そして、「本気でそこへ向かうんだ」という気持ちを、社長自身が示し、社員の中からも引き出していくことだと考えられます。

これは、引っ張る社長にも、聞く社長にも、背中で見せる社長にも、共通して求められるものです。
やり方は選べても、この役目だけは誰かに代わってもらうことができません。

ここで大切なのは、行き先を「言うこと」と「本気で向かうこと」が、セットになっている点です。

立派な目標を朝礼で一度話しても、翌日から社長自身がいつもどおり目の前の仕事に追われていれば、どうでしょうか。
社員は「あれは、その場の話だったんだな」と受け取ります。

反対に、行き先がはっきりしないまま社長がどれだけ熱心に働いても、社員は立ち止まってしまいます。
「社長は頑張っている。でも、自分は何を頑張ればいいのだろう」と。

山登りにたとえると、わかりやすいかもしれません。
「あの山の頂上を目指す」と決めること。
そして、天気が悪い日も、楽な別の道に心が揺れる日も、その頂上に向かい続けること。
この二つがそろって初めて、仲間は安心して一緒に歩けるのではないでしょうか。

小さな会社ほど、行き先が言葉になりにくい理由

では、なぜこの役目は、意外と果たされていないのでしょうか。

長く経営者の方々と向き合ってきて感じるのは、従業員が10名前後の会社ほど、ここでつまずきやすいということです。
その理由は、大きく三つあるように思います。

一つ目は、社長自身がいちばんの働き手だからです。
見積もり、現場、お金のやりくり、人の採用。
気づけば一日が終わり、「どこへ向かうか」を落ち着いて考える時間は、なかなか取れません。

二つ目は、「少人数だから、言わなくても伝わっている」と思いやすいことです。
毎日顔を合わせ、同じ現場に立っている。だからこそ、あらためて言葉にする必要を感じにくいのです。

社長がいちばん早く来て、いちばん遅くまで残っているのに、社員からは「社長が何を考えているのか、正直よくわからない」と言われてしまう。
小さな会社では、こうしたすれ違いが本当によく起こります。

三つ目は、言葉にすることへの照れや怖さです。
「町いちばんの会社に」などと口にすると、大げさに聞こえないか。
言ったのにできなかったら、格好がつかないのではないか。
そう考えて、つい口をつぐんでしまう方もいるのではないでしょうか。

特に、この三つ目は見過ごされがちです。
行き先を言葉にするということは、社員の前で自分に約束をすることでもあります。
だからこそ、勇気がいるのです。

社長の判断がそこで止まってしまうのは、力が足りないからではありません。
会社と社員のことを真剣に考えているからこそ、軽々しくは口にできない。
そういうことなのだと思います。

事例:口べたな二代目社長が、現場の言葉で会社を動かした話

ここからは、ある架空の会社のお話です。

地方都市で、水まわりの修理や設備工事を手がける会社があります。
社長の岩崎さん(仮名、40代前半)は二代目です。
配管の職人と事務の方を合わせて、従業員は10名ほどです。

先代のお父さんは、絵に描いたような「引っ張る社長」でした。
朝礼では大きな声で「とにかく早く、数をこなせ」。
職人たちもその勢いについていき、会社は地域で長く続いてきました。

岩崎さんは、正反対の性格です。
物静かで、人前で話すのが苦手。
社長を継いだばかりのころは父親のまねをして声を張ってみましたが、自分でも空回りしているのがわかりました。

それならと、今度はみんなの意見を聞く会議を始めました。
けれども話し合いはいつの間にか不満を言い合う場になり、何も決まらないまま終わってしまいます。
「やっぱり自分は、社長に向いていないのかもしれない」。
岩崎さんは、そう感じていたそうです。

気になっていたことが、もう一つありました。
売上は前の年とほとんど変わらないのに、利益が少しずつ減っていたのです。

決算前の打ち合わせで一つずつ見ていくと、材料費、ガソリン代、残業代がじわじわ増えていました。
さらに掘り下げると、一度修理したお宅にもう一度うかがう「やり直し」の訪問が、月に十数件あることがわかりました。

ここには、帳簿を眺めているだけではなかなか気づけないことがあります。
試算表(毎月の会社の成績表のような書類)には、「やり直し」という名前の項目はありません。
もう一度運ぶ部品は材料費に、もう一度走る車の燃料はガソリン代に、夜までかかった作業は残業代に。それぞれ姿を変えて、そっと紛れ込んでいるのです。
数字のどこを見ても「やり直し」とは書かれていないため、社長も社員も、その重さになかなか気づけません。

転機は、ある冬の日に訪れました。

若手の職人の川村さん(仮名、20代)が、一人暮らしの年配の女性のお宅で、給湯器を直したときのことです。
作業を終えると、その方は涙ぐみながらこう言ったそうです。
「これで今夜はお風呂に入れます。三日間、どこに電話していいのかわからなくて」

事務の方からこの話を聞いた岩崎さんは、はっとしました。
自分たちが届けているのは、配管や部品の取り替えだけではない。
「水やお湯が使えない」という不安を、終わらせることなのだ、と。

岩崎さんは、手元のノートに一文を書きました。

「水のことで困っている人の不安を、その日のうちに終わらせる」

立派な言葉ではありません。けれども、自分の口から自然に出てくる言葉でした。

朝礼で「何を話せばいいのか」と戸惑う社員たち

翌週から、岩崎さんは朝礼の中身を変えることにしました。

大きな声で話すのは、やはり苦手です。
そこで、自分が話す代わりに、毎朝一人ずつ、前の日のお客様の話をしてもらうことにしました。

ところが、最初の朝からつまずきます。

指名された職人は、しばらく黙ったあと「特にありません」と一言。
次の日も、その次の日も同じでした。

無理もありません。「お客様の不安を終わらせた話を」と言われても、職人にとって修理は毎日の当たり前の仕事です。
何が話すに値することなのか、わからなかったのです。
人前で話すことに慣れていない人も、大勢いました。

岩崎さんは、ここで朝礼をやめるのではなく、話しやすくなる工夫を一つずつ足していきました。

一つ目は、問いを小さくしたことです。
「どんな不安を終わらせたか」という大きな問いをやめ、「昨日のお客様で、帰るときにいちばんほっとした顔をしていたのは誰か」と聞くことにしました。
不安という目に見えないものより、お客様の顔のほうが、ずっと思い出しやすかったのです。

二つ目は、順番を前の日に伝えておいたことです。
朝いきなり指名されると、誰でも頭が真っ白になります。
前の日の帰りに「明日、お願いね」と一言かけておくだけで、移動中の車の中で思い出しておいてくれる人が出てきました。

三つ目は、事務の方の力を借りたことです。
事務の方は、お客様から電話を受けたとき、最初に言われた一言を書き留めていました。
「お湯が出なくて、明日孫が来るのに」「夜中から、水の音が止まらない」。
その書き留めを、朝礼の前に話す人へ渡すようにしたのです。
それを見ると、職人は「ああ、あのお宅か」と、自然に話し始められるようになりました。

四つ目は、うまくいかなかった話でもよい、としたことです。
ほっとした顔が思い浮かばない日は、「困った顔のまま、帰ってきてしまったお宅」の話でもいい。
岩崎さんはそう伝えました。
実は、この「うまくいかなかった話」が、あとで大きな意味を持つことになります。

そして五つ目に、岩崎さん自身が、最初の二週間、話し手の見本になりました。
「○○さんのお宅、帰るときに玄関まで見送ってくれた。あれはうれしかった」。
三十秒ほどの、口べたな社長の話です。
けれども、「このくらいでいいんだ」と社員が感じるには、十分だったようです。

話が終わっても、岩崎さんは評価もしなければ、注意もしません。
「ありがとう」と言い、一つだけ質問をします。
「そのお宅の方は、何がいちばん心配だったんだろうね」。
そして最後に短く、「今日も、それでいきましょう」と添えます。

一か月ほどたつと、「特にありません」はほとんど聞かれなくなりました。

あわせて、迷ったときの決め方も一つにしました。
「そのお宅の方が、今夜安心して過ごせるかどうか」。
件数をこなすことよりも、そちらを優先してかまわないと伝えたのです。

金曜日の夕方、職人と二人で「やり直しの現場」へ

本気を示すために、岩崎さん自身も動き方を変えました。
毎週金曜日の夕方、その週にやり直しになった現場へ、担当の職人と一緒に足を運ぶことにしたのです。
責めるためではありません。
「どうすれば、一回で終わらせられたか」を、二人で考えるためです。

最初のうち、職人の口は重いものでした。
「部品の不具合です」「たまたまです」。
社長と二人きりで失敗の現場に立つのですから、身構えるのは当然です。

そこで岩崎さんは、「なぜ失敗したのか」とは聞かないことにしました。
代わりに、「最初に来たとき、どんな順番で作業したか、もう一度やって見せてくれる?」と頼んだのです。
責めるための問いではなく、思い出すための問いです。
職人は道具を手に取りながら、少しずつその日の動きを話し始めました。

何週か続けるうちに、思いがけないことが見えてきました。

一つは、やり直しの多くが、腕の問題ではなかったことです。
直す技術は十分にありました。抜けていたのは、作業の最後にする確認でした。
水を流して数分ようすを見る。
締めたところを、もう一度さわる。
床下に水がにじんでいないか、のぞいてみる。
ほんの数分のことが、省かれていたのです。

では、なぜ省かれていたのか。
二人でその日の予定表を見直すと、理由ははっきりしました。
予定表には、現場と現場のあいだに移動の時間しか入っていなかったのです。
少しでも作業が長引くと、次のお宅との約束に遅れてしまいます。
職人は時計を気にしながら、最後の数分を削っていたのです。

「急がせていたのは、職人ではなく、会社の予定の組み方だった」。
岩崎さんはそう気づき、その場で職人に「急がせていたのは、こっちだった。ごめん」と頭を下げたそうです。
その日を境に、金曜日の現場は、職人にとって「叱られる場」ではなく「一緒に考える場」に変わっていきました。

二つ目に見えてきたのは、電話の受け方です。
やり直しのなかには、一回目に必要な部品を持っていなかったために、もう一度うかがったものもありました。
受付の段階で「いつから」「どこから」「どんな音か」を聞けていれば、一回で済んだかもしれません。
現場と事務のあいだに、小さなすき間があったのです。

そして三つ目。朝礼で出てきた「困った顔のまま帰ってきたお宅」の話と、金曜日の現場を重ねてみると、あることがわかりました。
やり直しだと思っていた電話のうち、かなりの数が、実は故障ではなかったのです。
給湯器の表示が点滅して不安になった。
止水栓(家の水を止める元栓)の場所がわからない。
交換したばかりの蛇口から、少し音がする。
どれも、帰り際に一言説明しておけば、お客様が不安な夜を過ごさずに済んだ話でした。

この三つがわかってから、会社はいくつかの小さな変更をしました。
予定表の現場と現場のあいだに、「確認の十五分」を必ず入れる。
電話の受付では、「いつから・どこから・どんな音か」の三つを聞く。
どちらも、お金をかけずにできることでした。

ただ、経験の長い大塚さん(仮名、50代)は、最初は半信半疑でした。
「十五分も空けたら、回れる件数が減って売上も減りますよ」。
もっともな心配です。岩崎さんは「三か月だけ、試させてほしい」と答えました。

現場の一言を、会社みんなの言葉にする

金曜日の現場行きは、その後も一度も休むことなく続きました。

三か月ほどたったころです。
岩崎さんは事務所で、あの大塚さんが若手の川村さんにこう声をかけるのを耳にします。

「帰る前に、使い方をもう一度説明しておけよ。かかってくる電話の半分は、故障じゃなくて使い方なんだ」

長年、現場に立ち続けてきた人にしか言えない言葉です。
そしてそれは、金曜日の現場で二人がたどり着いたことと、ぴたりと重なっていました。
半信半疑だった大塚さん自身が、いつの間にか、いちばんの引っ張り役になっていたのです。

ただ、岩崎さんはここで、もう一歩考えました。
この言葉が大塚さんと川村さんのあいだだけで終われば、大塚さんがいない日には消えてしまう。
一人の職人の知恵を、会社みんなが使える言葉にできないだろうか、と。

まず、翌週の朝礼で、大塚さんに同じ話をしてもらいました。
照れくさそうにしながらも、大塚さんは、使い方を説明したことで電話が来なくなったお宅の話を、いくつか披露してくれました。

次に、その言葉に短い名前をつけました。みんなで話し合って決まったのが、「帰り際の二分」です。
作業が終わって帰る前の二分間で、止水栓の場所、給湯器の表示が点滅したときの戻し方、しばらく続くかもしれない音のことを、お客様に伝える。
長い説明は覚えられませんが、短い名前なら、誰でも口にできます。
やがて「帰り際の二分、やった?」が、職人同士の合言葉になりました。

三つ目に、事務の方が電話の書き留めに印をつけるようにしました。
「故障の電話」なのか、「使い方の電話」なのか。金曜日の夕方には、その週の数を全員に伝えます。
現場の感覚だった「電話の半分は使い方」が、目に見える数になったのです。
最初の月、使い方の電話は全体のおよそ四割でした。
大塚さんの感覚は、ほぼ当たっていたわけです。

四つ目に、お客様に渡す小さな紙をつくりました。
冷蔵庫に貼れる大きさで、止水栓の場所を書き込める欄があります。
文章は、会社のかしこまった言葉ではなく、大塚さんがいつもお客様に話している言い回しを、そのまま使いました。

こうしたことを続けるうちに、朝礼や金曜日の現場から、ほかにも現場の言葉が生まれてきました。
「床が乾いているのを見てから帰る」は「乾き確認」に。「最初の電話で、三つ聞く」は「受付の三つ」に。
事務の方がそれを一枚の紙に書き足していき、半年で十いくつの言葉が並びました。
社内では、その紙を「うちの言葉」と呼んでいます。

大切なのは、どの言葉も、社長が考えたものではないということです。
現場で生まれた言葉を、社長が拾い、名前をつけ、くり返し使う。
そうするうちに、一人の職人の知恵が、会社みんなの約束に変わっていったのです。
岩崎さんがノートに書いた一文も、こうした現場の言葉に支えられて、ようやく中身のある言葉になっていきました。

半年後に変わったこと

半年後、やり直しの訪問は、月に十数件から四、五件ほどに減りました。
使い方の電話も、四割ほどから二割ほどまで減ったそうです。

大塚さんが心配していた件数は、ほとんど変わりませんでした。
「確認の十五分」を入れた分、二度目の訪問が減ったからです。
材料費や残業代は落ち着き、利益も少しずつ戻り始めています。

新しく入った若手には、今では大塚さんではなく、川村さんが「帰り際の二分」を教えています。
朝礼で話す社員の顔つきも変わったと、岩崎さんは話しています。

岩崎さんは、最後まで「引っ張る社長」にはなりませんでした。
けれども、行き先を自分の言葉にし、社員が話せる場をととのえ、現場の言葉を拾い続けました。
そして、金曜日の現場行きを一度も休まなかった。
その積み重ねが、何よりの「本気」のあかしとして、社員に伝わったのだと思います。

行き先を言葉にするための、三つの小さな一歩

岩崎さんの例から、私たちにも取り入れられそうなことを、三つ考えてみます。

一歩目:「誰の、どんな困りごとを、どう変えたいか」を一文にしてみる

最初から、立派な経営理念をつくろうとしなくて大丈夫です。

「誰の」「どんな困りごとを」「どう変えたいか」。
この三つを入れて、一文だけノートに書いてみてください。
お客様の顔が浮かぶ言葉ほど、社員にも伝わりやすいと考えられます。

うまく書けないときは、最近お客様に言われてうれしかった一言を思い出してみるのも一つです。
そこに、あなたの会社の行き先が隠れていることが少なくありません。

二歩目:毎日の小さな場面に結びつける

行き先は、額に入れて飾るだけでは動き出しません。

朝礼の一分。
迷ったときの決め方。
お客様への最後のひと声。
こうした日々のありふれた場面に、行き先をそっと結びつけてみてはいかがでしょうか。

話すのが苦手な社長であれば、岩崎さんのように、社員に話してもらう形でもかまいません。
ただ、そのときは問いをできるだけ小さくしてあげることが大切です。
「どんな役に立ったか」ではなく、「いちばんほっとした顔をしていたのは誰か」。
答えやすい問いと前の日のひと声が、話す人の背中をそっと押してくれます。

そして、社員の口から出てきた言葉のなかに「それだ」と思えるものがあれば、短い名前をつけて、くり返し使ってみてください。
社長が机に向かって考えた言葉より、現場から生まれた言葉のほうが、ずっと早く会社の中に広がっていくものです。

三歩目:社長がいちばんしつこく続ける

本気かどうかは、言葉よりも続け方に表れます。

週に一度でも、月に一度でもかまいません。
行き先に向けた行動を一つだけ決めて、社長自身が誰よりも長く続けてみてください。

社員は、社長の話のうまさよりも、社長が何を続けているかをよく見ています。
半年続けば、それはもう立派な「決意」として伝わっているはずです。

まとめ:話がうまくなくても、行き先は伝えられます

社長としてのやり方は、人それぞれです。
引っ張る社長にも、聞く社長にも、背中で見せる社長にも、それぞれのよさがあります。

ただ、どのやり方を選んでも、社長にしか果たせない役目が一つあります。
みんなで目指す行き先を言葉にすること。
そして、そこへ本気で向かう気持ちを自分の行動で示し、社員の中からも引き出していくことです。

行き先の言葉を、社長が一人で完成させる必要はありません。
社員が話せる場をつくり、現場から出てきた言葉を拾って、みんなの言葉に育てていく。
それもまた、この役目の大切な一部だと考えられます。

小さな会社では、社長が忙しく、照れくささもあって、この役目が後回しになりがちです。
けれども、少人数だからこそ、社長の一言と小さな行動は、全員にまっすぐ届きます。
それは、大きな会社にはない、小さな会社ならではの強みではないでしょうか。

まずは今夜、ノートを開いて、一文だけ書いてみることから始めてみるのも一つです。

きれいな言葉でなくてかまいません。
あなたが心からそう思える言葉であれば、それはきっと、社員の心にも届いていくはずです。

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