利益も、チームも、整える。  浜松市の税理士 小林徹が、次の一手まで一緒に考えます。

アイデアが生まれない日でも大丈夫。9つの「問い」が突破口を開く

アイデアが生まれない日でも大丈夫。9つの「問い」が突破口を開く

ブレインストーミングで新商品企画を広げる

はじめに―「何も思い浮かばない」は、むしろチャンス

「新しいアイデアを出してほしい」と言われると、多くの人はまず頭を抱えます。
白い紙の前でペンが止まり、時計の針だけが進んでいく。
そんな経験は、経営者であれば誰もが持っているのではないでしょうか。

でも実は、「何も思い浮かばない」という状態こそが、思考を深めるスタート地点です。
完全なゼロから何かを生み出す必要はありません。
すでに世の中にある「何か」に、少し別の角度から光を当てるだけで、新しいアイデアは生まれてくるからです。

今回ご紹介するのは、広告業界の第一人者であるアレックス・F・オズボーンが考案した「チェックリスト発想法」です。
これは、9つの質問に順番に答えていくだけで、発想の行き詰まりを打破できるという、非常に実用的な思考ツールです。
難しい理論は一切ありません。
中小企業の経営者や個人事業主の方が、日々の商品開発や業務改善にすぐ使えるよう、わかりやすく解説していきます。

背景―なぜ「ゼロから考える」は難しいのか?

人間の脳は、まっさらな状態から何かを考えることが、実はとても苦手です。
料理に例えると分かりやすいでしょう。
「今夜の夕食、何でもいいから何か作って」と言われると困りますが、「冷蔵庫に鶏肉と玉ねぎがあるよ」と言われた途端、いくつもの料理が頭に浮かんでくる。
そういうものですよね。

アイデアも同じです。
「制約」や「ヒント」があるほうが、むしろ豊かに広がっていきます。

オズボーンはこの性質を活かし、「すでに存在するもの」を出発点にして、9つの問いかけを使って発想を広げる手法を生み出しました。
この方法は後に「SCAMPER法」などとも呼ばれ、世界中の企業や教育現場で長く使われ続けています。

特に従業員10名前後の会社では、大企業のように専任の商品開発チームを持てないケースがほとんどです。
だからこそ、限られた時間とリソースの中で「使える発想法」を持っておくことが、大きな強みになります。

9つの問いかけ――具体的に使ってみよう

では、9つの問いを一つずつ見ていきましょう。

他の使い方はないか?

今の商品やサービスを、まったく別の目的で使えないか考えてみます。
「本来の用途以外に、誰かが喜びそうな使い方があるかもしれない」という視点です。

過去に似たような成功例はないか?

自分の業界に限らず、他の業界の成功例を参考にします。
「あの飲食店の仕組みを、自分の整体院に取り入れたらどうなる?」という横断的な発想です。

過去の成功例の何かを変えられないか?

形、色、使い方、提供の順番……何か一つだけ変えてみる。
小さな変化が、まったく新しい価値を生むことがあります。

拡大してみる

量を増やす、時間を長くする、対象エリアを広げる、サービスの強度を上げる。
「もっと大きくしたら?」という問いです。

縮小してみる

逆に、シンプルにする、短くする、小さくする。
「余分なものを削ぎ落としたら、本当に必要なものだけが残る」という発想です。

代用してみる

材料、素材、手順、道具……何か別のものに置き換えられないか考えます。
コストが下がったり、まったく新しい特長が生まれたりすることがあります。

並び替えてみる

提供する順番、工程の流れ、スケジュールの組み方を変えてみます。
「先にやっていたことを後回しにしたら?」という発想です。

逆・反対にしてみる

常識を逆転させてみます。「普通はこうする」の「逆」を試してみることで、思わぬ差別化につながることがあります。

組み合わせてみる

二つの異なるものを掛け合わせてみます。
「A×B=新しいC」という発想で、既存のものから新しい価値を生み出します。

事例―老舗和菓子店の「詰め合わせ」が生んだ新定番

ある地方の老舗和菓子店(従業員7名)のお話です。
この店は長年、地元の慶事や法事の手土産として愛されてきましたが、若い世代の来店が少なく、売上が少しずつ落ちていることに店主が悩んでいました。

ある日、スタッフ全員でオズボーンのチェックリストを使って話し合いをしました。

まず「他の使い方はないか?」を考えたとき、スタッフの一人が「うちのお菓子って、贈り物に使われることが多いけど、毎日のおやつに買ってもらえないかな」と発言しました。

次に「縮小してみる」の視点から、「高級な詰め合わせ箱じゃなくて、1〜2個だけ気軽に買える小パッケージにしたら?」というアイデアが出ました。

さらに「組み合わせてみる」で、「和菓子とコーヒーのペアリング提案をしたらどうか」という声も。
地元のコーヒー専門店と組んで、「和菓子×珈琲」のセット商品を開発しました。

「並び替えてみる」では、これまで予約販売が中心だったものを、店頭でいつでも買える日常使いの商品として前面に出す形に変えました。

結果、SNSで話題になり、観光客や若い世代のリピーターが増加。
詰め合わせ箱の売上も、「新しい顧客層が記念日に買ってくれるようになった」と相乗効果が生まれました。

このように、9つの問いは「バラバラに使う」のではなく、複数の問いを組み合わせて使うことで、より大きな変化を生み出すことができます。

まとめ―アイデアは「見つける」より「育てる」もの

オズボーンのチェックリスト発想法の9つの問いを振り返ると、それぞれがシンプルでありながら、確かな力を持っていることが分かります。
「他の使い方はないか」という転用の発想に始まり、「成功例を参考にする」応用、「何かを変える」変更、「拡大する」拡張、「縮小する」削減、「代用する」置換、「並び替える」再配列、「逆にする」逆転、そして「組み合わせる」統合へと続く9つの問いは、どれも特別な知識や才能を必要としません。

必要なのは、この問いを手元に置いて、一つずつ試してみる行動力だけです。

大切なのは、「完全に新しいものを作らなければ」というプレッシャーを手放すことです。
世の中にある「すでに良いもの」に、一つ問いを加えるだけで、あなたの会社ならではの価値が生まれます。

アイデアとは、突然空から降ってくるものではありません。
「問い」という水をやることで、少しずつ育っていくものです。

ぜひ今日から、スタッフとの会議や一人での作業時間に、この9つの問いをメモ帳に書いて試してみてください。
最初は「こんなことか」と思うかもしれませんが、続けていくうちに、思考のクセが変わり、日常のあちこちにアイデアの種が見えてくるようになります。

あなたの会社には、すでに多くの「ヒント」が眠っています。
あとは、その扉を開ける「9つの鍵」を使うだけです。

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