利益も、チームも、整える。  浜松市の税理士 小林徹が、次の一手まで一緒に考えます。

頑張っているのに、なぜか結果につながらない理由

頑張っているのに、なぜか結果につながらない理由

「手段」が「目的」にすり替わる瞬間

毎日忙しく働いているのに、「これでいいのだろうか」と、ふと不安になることはないでしょうか。
新しい仕組みを導入したり、社内のルールを見直したり、あるいは新しい取引先の開拓に力を入れたりと、経営者は常に何かに取り組んでいます。
ところが、それだけ努力をしているのに、思うような成果が出ないと感じることも少なくないのではないでしょうか。

実は、その原因の多くは、能力や努力の量ではなく、「何のためにやっているのか」という部分が、いつの間にか見えなくなっていることにあるのかもしれません。
頑張り方が間違っているのではなく、頑張る方向が、少しずれてしまっているだけ、ということも多いのです。
目の前の忙しさに追われているときほど、この「方向のずれ」には気づきにくいものです。
だからこそ、一度立ち止まって考えてみる価値があるのではないでしょうか。

「やること」が「目的」にすり替わる瞬間

たとえば、ダイエットを始めるとき、多くの人は「健康になりたい」「体を軽くして、階段の上り下りを楽にしたい」という思いから出発します。
ところが、しばらく続けているうちに、いつの間にか「体重計の数字を減らすこと」そのものが目的になってしまうことがあります。
数字が減れば嬉しく、増えれば落ち込む。
本来目指していたはずの「健康」や「軽やかな毎日」は、いつの間にか後回しになり、数字を追いかけることだけが日課になってしまうのです。

これは、会社の中でもよく起きていることではないでしょうか。
新しい制度やツールを導入するとき、最初は「お客様にもっと喜んでもらいたい」「社員が働きやすくなってほしい」といった思いがあったはずです。
ところが、時間が経つにつれて、「その制度を続けること」「そのツールを使いこなすこと」自体が目的になってしまう。
気がつけば、何のために始めたのかを、誰も説明できなくなっている。
そんな状態に心当たりがある方もいらっしゃるかもしれません。

具体的な作業や道具は、目に見えるぶん、意識しやすいものです。
手順書もありますし、進み具合も数字で確認できます。
一方で、「本当は何のためにやっているのか」という、もっと大きな目的は、目に見えないぶん、忙しい毎日の中では、どうしても後回しにされ、忘れられやすいのです。
とくに、会社が忙しく回っているときほど、この傾向は強くなるように思います。

目的をさかのぼって考えてみる

こうした状態から抜け出す方法のひとつが、「目的をさかのぼって考えてみる」ということです。
今取り組んでいる作業から、少し距離を置いて、「そもそも、これは何のためにやっているのだろう」と問い直してみるのです。

これは、日々の具体的な作業から離れて、少し抽象的な視点に立ってみる、ということでもあります。
「抽象的」というと難しく聞こえるかもしれませんが、要は「目の前の作業を一段高いところから見てみる」というイメージです。
高い建物の屋上から街を見下ろすと、普段歩いている道の全体のつながりが見えてくるように、目的を一段上から見ることで、日々の作業の意味が見えてくるのです。

たとえば、「毎月の請求書を早く出す」という作業も、一段高いところから見れば、「お客様との信頼関係を大切にする」という目的につながっているかもしれません。
さらにもう一段上から見れば、「長くお付き合いいただける会社であり続ける」という、会社としての姿勢そのものに行き着くこともあります。
そうやって視点を上げていくことで、日々の作業の意味が、あらためて見えてくることがあります。

目的を上げすぎると、逆に見えなくなる

ただし、ここで気をつけたいことがあります。
目的をさかのぼって考えることは大切ですが、あまりに抽象的な言葉でまとめてしまうと、今度は逆に、目指す姿がぼんやりしてしまうのです。

たとえば、「地域一番の会社になる」「お客様第一主義を徹底する」「社員がいきいきと働ける会社にする」といった言葉は、それ自体は立派な目標に聞こえます。
しかし、この言葉だけを掲げても、社員一人ひとりが「では、明日から何をすればいいのか」をイメージすることは難しいのではないでしょうか。
人によって「お客様第一主義」の受け止め方はバラバラで、ある人は「値引きをすること」だと思い、別の人は「とにかく丁寧に頭を下げること」だと思うかもしれません。
同じ言葉を掲げていても、実際の行動はバラバラになってしまうのです。

ここで、ある印刷会社の例を考えてみましょう。
この会社の社長は、社員に向けて「お客様第一主義を徹底しよう」と朝礼のたびに繰り返し伝えていました。
社長自身は、心からそう思っていましたし、間違ったことは言っていません。
ところが、現場の社員からすると、「具体的に何をすれば、お客様第一主義になるのか」がわからず、日々の仕事は今までとあまり変わらないまま、半年、一年と時間だけが過ぎていきました。
社長は「なぜ伝わらないのだろう」と悩み、社員は社員で「頑張っているつもりなのに、何を求められているのかわからない」と戸惑う。
言葉は立派でも、それだけでは、行動には結びつかない。
そんな、すれ違いの状態が続いていたのです。

ちょうどいい「見える化」がカギになる

では、どうすればよかったのでしょうか。
ポイントは、大きな目的と、日々の具体的な行動との「橋渡し」をしてあげることではないかと思います。

先ほどの印刷会社であれば、「お客様第一主義」という言葉を、もう少し具体的な行動レベルまで落とし込んでみるのです。
たとえば、「お問い合わせには当日中に必ず一度は返信をする」「見積もりの依頼には翌営業日までに回答する」「納品後には必ず一本お礼の電話を入れる」というように、誰が読んでも同じ行動をイメージできる形にしてみます。

こうすることで、社員は「今日、自分は何をすればいいのか」がはっきりします。
返信のスピードや、お礼の電話といった、小さくても目に見える行動が積み重なっていくのです。
そして、その積み重ねが、結果として「お客様第一主義」という大きな目的につながっていく、という流れができあがります。
実際に、行動を具体的にしたことで、社員からの問い合わせ対応への不満の声が減り、社長自身も「ようやく思いが伝わってきた」と感じられるようになった、という変化も起こり得るのではないでしょうか。

大きな目的を掲げることと、具体的な行動に落とし込むこと。
このふたつは、どちらか一方だけでは不十分で、両方があってはじめて機能するのではないでしょうか。
大きな旗だけを立てても、進む道筋が見えなければ人は動けませんし、逆に、目の前の作業だけに追われていては、何のために進んでいるのかを見失ってしまいます。

これは、旅行にたとえるとわかりやすいかもしれません。
「楽しい旅行にしたい」という大きな目的だけを持って出かけても、行き先や交通手段が決まっていなければ、なかなか動き出せません。
反対に、「新幹線の何時何分の便に乗る」という予定だけを細かく決めていても、そもそも何のための旅行なのかを忘れてしまっては、味気ないものになってしまいます。
大きな目的という「行き先」と、具体的な行動という「乗り物や時刻表」の両方があってこそ、旅は実りあるものになるのではないでしょうか。
会社の目的も、これと同じように考えられるように思います。

まずは、自社の「当たり前」を問い直してみる

とはいえ、いきなり会社全体の目的を見直すのは、大掛かりに感じられるかもしれません。
そんなときは、まず身近なところから始めてみるのも一つです。

たとえば、社内で当たり前のように続けている作業をひとつ選んで、「これは、そもそも何のためにやっているのだろう」と問い直してみる。
毎月かならず作成している資料や、当たり前のように続けている会議など、身近なものほど良いのではないでしょうか。
そして、その目的を、社員みんなが同じようにイメージできる、具体的な言葉に置き換えてみる。
この小さな積み重ねが、会社全体の空気を少しずつ変えていくのではないかと思います。
一度にすべてを変えようとせず、ひとつずつ丁寧に見直していくくらいがちょうど良いのかもしれません。

まとめ ― 目的と行動、両方に光を当てる

日々の忙しさの中では、目の前の作業に追われて、「そもそも何のためにやっているのか」を見失ってしまうことは、誰にでも起こり得ることです。
それは、決して特別なことでも、恥ずかしいことでもありません。
むしろ、それだけ日々の業務に真剣に向き合ってきた証とも言えるのではないでしょうか。

大切なのは、時々立ち止まって、目的をさかのぼって考えてみること。
そして、その目的を、抽象的な言葉のままにせず、社員一人ひとりが「今日、何をすればいいか」をイメージできる具体的な行動に落とし込んでみること。
この両方を意識するだけで、日々の仕事の意味が、少しずつ違って見えてくるのではないでしょうか。

まずは、身近なところから、少しずつ試していただければと思います。
小さな問い直しの積み重ねが、いつか会社全体の大きな変化につながっていくのではないでしょうか。

この記事をシェアする

記事一覧へ戻る

関連記事 Relation Entry