利益も、チームも、整える。  浜松市の税理士 小林徹が、次の一手まで一緒に考えます。

社長の「考え方」が、会社の未来をつくる~思いの向きを変えると、経営が動き出す~

社長の「考え方」が、会社の未来をつくる~思いの向きを変えると、経営が動き出す~

心の持ち方が経営を変える

税理士として気づいた、数字の奥にあるもの

税理士として長年、多くの中小企業の経営者の方々とお付き合いしてきました。

毎月の試算表をご一緒に眺めながら、「今月は売上が厳しかった」「材料費が上がって苦しい」という声を聞くこともあれば、「新しい取引先が増えてきた」「スタッフが育ってきた」という報告をうれしそうにされる場面もあります。

業種も規模も違う多くの会社を見てきた中で、あるひとつのことが気になるようになりました。

同じような業種で、同じような規模の会社でも、じわじわと伸びていく会社と、なかなか前に進めない会社があります。
その違いを数字だけで説明しようとすると、どこか説明しきれないものが残るのです。

戦略の巧拙でもなく、立地でもなく、商品の優劣でもない。違いは、経営者の「考え方」や「思い方」にあることが多いと、私は実感しています。

これは根性論や精神論を語りたいのではありません。
数字と向き合ってきた税理士として、現場で感じてきたとても現実的な話です。

「考え方」が現実をつくる、とはどういうことか

少し大げさに聞こえるかもしれませんが、こんなふうに考えてみてください。

人間の心の中に「どうせうまくいかない」という思いが育ってくると、それに合わせて行動がついてきます。
新しいことを試みようとしても「どうせ失敗する」とブレーキがかかる。
商談に臨んでも「うちには無理かもしれない」という気持ちがにじみ出てしまう。
スタッフに何かを頼もうとしても「伝わらないだろう」と最初から諦めてしまう。

その結果、どうなるでしょうか。
行動しなければ結果も出ない。
結果が出なければ「やっぱり無理だった」という思いがさらに強まる。
こうして、考え方と現実がぐるぐると悪い方向に回り続けてしまうのです。

反対に、「まだできることがあるはずだ」「やってみよう」という思いを持っている経営者は、同じ状況でもまったく違う行動をとります。
小さなチャンスを見逃さない。
うまくいかなくても「次はこうしよう」と切り替えられる。
そのひとつひとつの積み重ねが、会社の姿を少しずつ変えていくのです。

つまり、思いの向きが行動を変え、行動が現実を変えていくのではないでしょうか。

難しい言葉を使えば「自己成就予言」と言いますが、要は「信じたとおりに動いてしまう」という人間の性質です。
これは弱さではありません。
誰にでも起きることです。

「消極的な思い」がどう悪循環をつくるか

「消極的」というのは、弱い人や能力のない人のことを言うのではありません。
むしろ、一生懸命やってきて、何度も傷ついてきた経営者ほど、この罠に入りやすいと感じています。

過去の失敗が頭に残っている。
頑張ったのに報われなかった記憶がある。
そういう経験が重なると、「また同じことになるのでは」という思いが先に立つようになります。
これは当然の反応です。

ただ、その思いが行動にブレーキをかけてしまうと、変化は起きません。

税理士として数十社の会計書類を見てきた中で、業績が長く低迷している会社には共通点があると感じます。
それは、「社長がなかなか意思決定を動かせない」ことです。
「やってみよう」という話が出ては消え、また出ては消えていく。

その理由を社長に聞くと、「失敗が怖い」「自分にその力があるかどうかわからない」という言葉が返ってくることが少なくありません。

これは判断力の問題ではないのです。
心の向きの問題であることがほとんどです。

「積極的な思い」がどう好循環をつくるか

一方で、少しずつでも前に進んでいる会社の経営者には、ある共通した「思い方のクセ」があります。

それは、「完璧でなくていい、まずやってみよう」という姿勢です。

うまくいかなくても「学びがあった」と受け取る。
小さな成功を「よし、次もいける」と積み重ねる。
こういう思い方の習慣が、行動の量を増やし、経験の厚みを増やし、やがて会社の実力を高めていくのだと思います。

もうひとつ大切なことがあります。
経営者の思い方は、スタッフにも伝わるということです。

社長が前向きな空気を持っていると、スタッフもその雰囲気の中で仕事をします。
逆に、「どうせ変わらない」という空気が漂っている職場では、どんなに良い仕組みを入れても、なかなか根付きません。

会社の雰囲気は、社長の思いの向きが作っていると言っても言い過ぎではないでしょう。

事例:「どうせ無理」が「やってみよう」に変わった日

ここで、ある経営者の話をご紹介します。

愛知県で小さなハウスクリーニング会社を経営する40代の経営者・Nさんは、創業10年を迎えたころから売上が伸び悩んでいました。

もともと技術には自信があり、お客様からの評判も悪くありません。
ただ、新規の仕事が増えない。
広告を出しても反応がない。
スタッフを増やしたいけれど、今の売上では踏み切れない。こういった状況が数年続いていました。

毎月の試算表を一緒に確認するたびに、Nさんは口ぐせのようにこう言っていました。
「うちみたいな小さな会社には、どうせ限界がありますよね」と。

ある日、私はNさんに一つ質問しました。
「今まで一番喜んでもらえた仕事って、どんな仕事ですか?」

Nさんは少し間を置いてから、「お母さんが施設に入ることになって、実家を片付けることになったご家族の仕事です。汚れがひどくて、他の業者に断られていたんですが、うちがきれいにしたら泣いて喜んでくれて」と話してくれました。

「それは、他の会社には簡単にはできないことですよ」と私は言いました。
「難しい現場でも丁寧に対応できる、それがNさんの会社の力じゃないですか」

その日をきっかけに、Nさんは少しずつ変わりはじめました。
「難しい現場が得意な会社」として、同業者が断るような案件を積極的に受けるようにしたのです。
最初は恐る恐るでしたが、やってみると評判が広がり、半年後には不動産管理会社から定期的な依頼が来るようになりました。

数字が大きく変わるまでには時間がかかりましたが、Nさんの目が変わりました。
「どうせ限界がある」という目から、「まだやれることがある」という目に。

思い方が変わると、行動が変わる。
行動が変わると、現実が少しずつ変わっていくのだと、改めて実感した出来事でした。

心は「受け取るパイプ」—可能性はすでにあなたの中にある

少し詩的な表現になりますが、こんなたとえを使ってみます。

山の上から流れてくる清らかな水を、田んぼに引く水路を想像してください。
水(可能性やチャンス)はどこへでも流れようとしています。
ところが、水路(心)が詰まっていたり、向きが違っていたりすると、水は来ない。

水路を開いて、水の流れる方向に向ければ、水は自然に流れてきます。

「自分には無理だ」「もう変わらない」という思いは、水路を詰まらせてしまいます。
せっかくのチャンスや良い出会いが、目の前を流れていっても気づかなくなってしまうのです。

「まだできる」「やってみよう」と思い方の向きを変えると、水路が開いてきます。
情報も、人の縁も、仕事のチャンスも、流れ込みやすくなってくるのです。

これは、精神論だけの話ではありません。
前向きな経営者の周りには、実際に良い情報が集まりやすい。
信頼できる人が引き寄せられやすい。
小さなチャンスに気づきやすい。
これは、多くの経営者と向き合ってきた中での実感です。

あなたの会社を変える力は、外から持ってくるものではなく、あなた自身の中にすでにあるのではないでしょうか。

今日から試せること—まずここから始めてみましょう

「考え方を変えよう」と言われても、「どうやって?」と感じる方も多いでしょう。
大きく変えようとすると、かえって難しくなります。
まずは小さなところから試してみるのが一つです。

「今日うまくいったこと」を一つ書き留める

日々の経営では、問題や課題ばかりが目につきます。
意識して「今日うまくいったこと」を一つだけ書き留める習慣を持ってみてください。
些細なことで構いません。
「あのお客様が喜んでくれた」「スタッフが自分から動いてくれた」でも十分です。
少しずつ、「できていること」に目が向くようになっていきます。

「失敗」を「試み」と呼び直してみる

「あの取り組みは失敗だった」ではなく、「あの試みから学べたことがある」と言い換えてみる。
言葉を少し変えるだけで、思い方が少しずつほぐれてきます。

月に一度「この会社の強みは何か」を自問する

弱点ばかりに意識が向くと、経営の方向性が内向きになります。
「自分の会社の強みは何か」を月に一度、静かに考えてみてください。
大きなことでなくていいのです。
「丁寧な対応」「顔が見える関係」「地域に根ざした信頼」でも、立派な強みです。

信頼できる人に「今の状況」を話す

一人で抱え込んでいると、思い方がだんだん内向きになります。
税理士や経営仲間など、信頼できる人に定期的に話を聞いてもらうことで、外からの視点が入り、思い方がほぐれることがあります。
話すだけで、整理されることは意外と多いのです。

まとめ—経営者の思いが、会社の空気をつくる

今回のテーマは「考え方」や「思い方」でした。
一見、経営の数字や戦略とは関係ないように見えるかもしれません。

でも、多くの経営者の方々と長くお付き合いしてきた中で、確かに感じることがあります。
数字の手前に、思い方があるということです。

積極的な思い方は、積極的な行動を生む。
積極的な行動は、少しずつ積極的な現実をつくっていく。
そのサイクルが回りはじめると、会社の空気が変わり、スタッフの動き方が変わり、やがてお客様との関係も変わっていきます。

もちろん、考え方だけで全てが解決するわけではありません。
戦略も、数字の管理も、人の育成も大切です。
ただ、その全ての土台には、経営者自身の思いの向きがあるのではないでしょうか。

今の会社の状況がどうであれ、あなたには会社を変える力があります。
その力は、外から借りてくるものではなく、あなたの心の中にすでにあるのです。

まずは今日、「うまくいったこと」を一つ見つけてみてはいかがでしょうか。
そのひとつの気づきが、会社の未来をつくる思い方への、最初の一歩になるかもしれません。

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