利益も、チームも、整える。  浜松市の税理士 小林徹が、次の一手まで一緒に考えます。

「みんなと同じ」情報発信が、なぜ届かないのか

「みんなと同じ」情報発信が、なぜ届かないのか

読まれる会社と、読まれない会社の小さな違い

ホームページやブログ、SNSで情報を発信しているのに、なかなか読まれない。
そんな悩みを抱える経営者の方は、実はとても多いのではないでしょうか。

真面目に、正確に、役に立つことを書いているつもりなのに、反応が薄い。
そうなると、「もっと更新頻度を増やそうか」「写真をきれいにしようか」といった、やり方の工夫に目が向きがちです。
もちろんそれも大切なことですが、実はその手前に、もっと根本的な問題が隠れていることがあります。

それは、「内容が、他の誰かと同じになっていないか」という点です。

たとえば、同じ業種の会社のホームページを何社か見てみると、書かれていることが驚くほど似ていることがあります。
「お客様第一」「地域に根ざした」「安心・安全」といった言葉は、どこの会社の文章にもよく登場します。
もちろん、それらは本当に大切にしていることなのだと思います。
ですが、読み手からすると、「どこかで見た文章だな」という印象になってしまい、記憶にも残りにくいのです。

私たちは日々、大量の情報に囲まれて生活しています。
その中で、わざわざ立ち止まって読まれる文章というのは、実は「みんなと同じこと」ではなく、「そこにしかないこと」なのではないでしょうか。

人は「違い」に目を留める

少し身近な例で考えてみましょう。

真っ白な壁に、真っ白なボールが置いてあっても、私たちはあまり気づきません。
ですが、その壁に一つだけ赤いボールが置いてあれば、自然と目がそこに向かいます。
人の注意というのは、「同じもの」よりも「違うもの」に反応するようにできているのです。

情報発信も、これと似たところがあります。
多くの人が同じような角度から同じようなことを語っている中で、あなたが自分自身の経験や、実際に見てきたお客様の姿、現場で感じたことを語ると、それだけで一つ「違うもの」として目に留まりやすくなります。

大切なのは、「正しいことを言おう」とするあまり、当たり障りのない、誰にでも言えるような内容になってしまわないようにすることではないかと思います。
正しさよりも、「自分だからこそ気づいたこと」「自分だからこそ経験したこと」の方が、実は読み手の心には残りやすいのです。

ある工務店の物語

ここで、一つの例え話をお伝えします。

地方で小さなリフォーム会社を営む、ある社長がいました。
従業員は8名ほど。
真面目な仕事ぶりが評判で、お客様からの信頼も厚い会社です。

あるとき、集客のためにブログを始めることにしました。
「水回りのリフォームのポイント」「補助金制度の紹介」といった、役に立ちそうな情報を、丁寧に調べてまとめて発信していきました。
ところが半年経っても、アクセスはほとんど増えません。
同じような内容の記事は、他の工務店のサイトにもたくさんあったのです。

社長は一度、ブログをやめようかとも考えました。
ですが、ふと「自分にしか書けないことは何だろう」と考え直してみたそうです。

そこで書いたのが、実際にあった、ある高齢のお客様とのやり取りでした。
お風呂のリフォームを相談されたとき、「本当は手すりを一つ多くつけたほうが安全なのに、見た目を気にして遠慮されるお客様がいる」という、現場での小さな葛藤の話です。
専門的な工事の説明ではなく、「なぜ自分たちがこの仕事を大切にしているのか」という、社長自身の思いを綴った記事でした。

すると、その記事だけ、これまでにない反応がありました。
「うちの親も同じことで悩んでいた」「そこまで考えてくれる会社なら頼みたい」という声が届いたのです。

この社長がしたことは、特別な技術ではありません。
ただ、「みんなが書きそうなこと」をやめて、「自分だけが知っていること」を書いた。それだけの違いだったのです。

自分にしか書けないことの見つけ方

「自分には特別なことなんてない」と感じる経営者の方も、少なくないかもしれません。
ですが、それは謙虚さゆえの思い込みであることが多いように思います。

長年、同じ仕事を続けてきた方には、必ずその方だけの「引き出し」があります。
お客様との印象的なやり取り、失敗して学んだこと、業界の常識に対してひそかに感じている違和感。
そうしたものは、当たり前すぎて、本人にはなかなか「価値がある」とは見えにくいものです。

一つの方法として、大きなテーマから考えるのではなく、「最近、印象に残ったお客様とのやり取りは何だったか」を、一つだけ思い出してみるのはいかがでしょうか。
そこに、他の誰にも書けない、あなただけの視点が眠っていることが多いのです。

また、「他の人と違う意見を言うのは、なんとなく気が引ける」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
批判されるのではないか、変に思われるのではないか、という不安は自然なものです。
ですが、あなたの経験に基づいた率直な意見は、実は多くの読み手にとって「ここまで正直に書いてくれるのか」という信頼につながることが多いのです。

まずは、業界の常識をそのまま伝えるのではなく、「私はこう考えている」という一言を、記事の中にひとつだけ加えてみることから始めてみるのも一つではないでしょうか。

まとめ 明日からの一歩

情報発信で読まれないと悩んだとき、多くの方はまず「量」や「見た目」を工夫しようとします。
それも意味のないことではありませんが、その前に一度、「自分は、みんなと同じ視点で書いていないか」と振り返ってみることが、実は一番の近道なのかもしれません。

人は、同じものではなく、違うものに目を留めます。
そしてその「違い」とは、特別な才能や、誰も知らない秘密の情報である必要はありません。
あなたが日々の仕事の中で感じてきた、小さな気づきや、素直な思いこそが、他の誰にも書けない、かけがえのない財産なのです。

明日、何か一つ発信をするときには、「これは、みんなが書きそうな内容だろうか。それとも、自分にしか書けない内容だろうか」と、少しだけ自分に問いかけてみてはいかがでしょうか。
そうした小さな積み重ねが、いつか「この人の文章が読みたい」と思ってくれるファンを、少しずつ増やしていくのではないかと思います。

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