利益も、チームも、整える。  浜松市の税理士 小林徹が、次の一手まで一緒に考えます。

「暇な時期をなんとかしたい」から卒業する ― 販促のタイミングを見直してみる

「暇な時期をなんとかしたい」から卒業する ― 販促のタイミングを見直してみる

繁忙期こそ、新しいお客様との出会いのチャンスだった

売上が落ち込む時期になると、「何か手を打たなければ」と考える経営者の方は多いのではないでしょうか。
それはとても自然な感覚です。
暇な時期が続くと不安になりますし、じっとしているのも落ち着きません。

しかし、実はその「何とかしたい」という気持ちが、知らず知らずのうちに大切な経費を無駄にしてしまっていることがあります。
今日は、新しいお客様を集めるための広告や活動、いわゆる販促を、いつ、どのタイミングで行うのが効果的なのか、一緒に考えてみたいと思います。

なぜ「暇な時期」は暇なのか、考えたことはありますか

多くの会社では、売上が落ちる時期を見て「ここで何か販促をしなければ」と考えがちです。
割引チラシを配ったり、キャンペーンを組んだりする会社も少なくありません。

けれども、少し立ち止まって考えてみてください。
その時期がなぜ暇なのか、という理由です。

たとえば、お客様が何かを「買いたい」と思う気持ちには、二つの種類があります。
一つは「欲しい」という気持ち、もう一つは「必要だから買わなければ」という気持ちです。
前者を「ウォンツ」、後者を「ニーズ」と呼ぶこともありますが、要は「あったらいいな」と「なければ困る」の違いだと考えていただければ十分です。

暇な時期というのは、多くの場合、お客様の側に「今すぐ必要だ」という理由がない時期です。
欲しい気持ちはあっても、必要に迫られていなければ、人はお金を使うのを控えます。
そんな時期にいくら割引の案内を出しても、反応が鈍いのは、ある意味で当然のことなのです。
つまり、暇な時期が暇なのは、会社の努力が足りないからではなく、そもそもお客様の側に「今買う理由」が乏しいからだと考えられます。

頑張る場所を間違えると、経費がもったいないことになる

ここで問題になるのが、多くの会社が「暇な時期を何とかしよう」と、そこにお金と労力を集中させてしまうことです。

お客様の側に理由がない時期にどれだけ声をかけても、反応は薄いままです。
結果として、チラシの印刷代や広告費、担当者が費やした時間など、さまざまな経費が、思ったほどの成果を生まずに消えていってしまいます。
これは経営者にとって、とてもつらいことではないでしょうか。
頑張っているのに、報われている実感が持てないというのは、モチベーションにも関わる問題です。

一方で、多くの会社には、逆に「何もしなくてもお客様が来てくれる」時期が存在します。
売上のグラフを一年間眺めてみると、たいてい突出して高い月が三、四か月ほどあるものです。
この時期は、お客様の側に「今買う理由」がすでに存在している時期です。

不思議なことに、この「放っておいても売れる時期」には、あまり力を入れて広告を打たない会社が多いように見受けられます。
「今は忙しいから、わざわざ宣伝しなくても大丈夫」と考えてしまうのかもしれません。
しかし、実はこここそが、新しいお客様と出会う最大のチャンスなのです。

「売れる時期」にこそ、種をまく

考えてみれば当然のことですが、お客様が「買いたい理由」を持っているときに声をかけたほうが、反応が良いのは自然なことです。
忙しい時期にこそ、新しいお客様を集めるための広告費を集中させる。
これが、経費を有効に使うための一つの考え方ではないでしょうか。

ここで、ある写真館の例をご紹介したいと思います。

はれのひ写真館では、毎年6月と9月に売上が落ち込むことに悩んでいました。
そこで、この二か月に合わせて、割引クーポンを配る販促を毎年行っていました。
ところが、いくらクーポンを配っても、反応は毎年芳しくありませんでした。

あるとき、店主が売上のグラフをじっくり見直したところ、3月(卒業式・入学式のシーズン)と11月(七五三のシーズン)に、売上が突出して高いことに気がつきました。
考えてみれば当たり前のことですが、この二つの時期は、お客様の側に「記念写真を撮らなければ」という明確な理由がある時期です。

そこで店主は、思い切って方針を変えました。
6月や9月に配っていた割引クーポンの予算を、3月と11月の広告に回すことにしたのです。
地域の情報誌への掲載を増やし、卒業式や七五三の予約を検討し始める少し前の時期を狙って、案内を出すようにしました。

結果として、もともと来店する見込みのあったお客様に加えて、新しく写真館を知ってくれるお客様が着実に増えていきました。
「忙しい時期にさらに宣伝するのは気が引ける」と最初は感じていたそうですが、実際にやってみると、忙しい時期だからこそ、広告を見た人がすぐに行動に移してくれることを実感したとのことです。

新しいお客様に、もう一度会いに来てもらう工夫

ただし、忙しい時期に新しいお客様と出会えたとしても、それで終わりにしてしまってはもったいない話です。
せっかく縁があったお客様に、もう一度足を運んでいただく工夫があってこそ、その出会いが本当の意味で会社の力になります。

はれのひ写真館では、3月に七五三の撮影で来店されたお客様に対して、「次回のご家族写真撮影に使える割引券」を、撮影から3か月以内に使える形でお渡しするようにしました。
七五三が終わって少し落ち着いた頃に、家族写真やお子さまの成長記録の撮影を勧める案内です。

なぜ3か月という期間を設けたのかというと、あまりに期限が先だと、お客様の記憶から店の存在が薄れてしまうからです。
逆に短すぎても、次の予定を立てにくいものです。
3か月という期間は、記念行事の余韻が残りつつ、次の行動を考えられる、ちょうどよい間合いだと店主は感じているそうです。

このように、忙しい時期に出会った新しいお客様に対して、比較的短い期間のうちにもう一度来店していただく仕組みを用意しておくことは、とても意味のあることではないでしょうか。
一度きりのご縁を、続くご縁に変えていく工夫だと言えます。

なぜ、わかっていてもなかなか変えられないのか

ここまでお読みいただいて、「言われてみれば、その通りだ」と感じた方も多いのではないでしょうか。
実際、この考え方自体は、決して難しいものではありません。
それでも、多くの経営者がなかなか実行に移せないのには、理由があります。

一つは、「暇な時期を放っておくのが怖い」という気持ちです。
売上が落ちている月を目の前にすると、じっとしていることに罪悪感のようなものを覚える経営者は少なくありません。
何かをしなければ、という焦りが先に立ち、結果として、効果の薄い時期にこそ力を注いでしまうのです。
これは決して怠慢ではなく、むしろ真面目に経営と向き合っているからこそ生まれる感覚だと言えます。

もう一つは、「忙しい時期にさらに宣伝するのは気が引ける」という遠慮です。
すでに手一杯のときに、新しいお客様を呼び込む案内を出すのは、なんとなく気が咎めるものです。
先ほどの写真館の店主も、最初はまさにこの感覚に悩んでいました。
忙しいときに、これ以上お客様を増やしてどうするのか、という迷いです。

しかし、忙しい時期の一週間や二週間だけ広告を出したからといって、対応しきれないほどお客様が殺到することは、実際にはあまりありません。
むしろ、少し先の予約を案内する形にすれば、無理なく対応できることがほとんどです。
判断が止まってしまう場所は、たいてい「やってみる前の不安」にあります。
実際に小さく試してみると、思っていたほど大変ではなかった、という声をよく耳にします。

まずは、自社の売上カレンダーを眺めてみることから

ここまでお伝えしてきた考え方は、決して難しいものではありません。
まずは、自社の月ごとの売上を、一年分並べて眺めてみることから始めてみるのも一つです。

どの月が特に高いのか。
その月に、お客様はどんな理由で自社を選んでくれているのか。
そして、その理由がある時期に、しっかりと広告費や労力をかけられているかどうか。
この三つを確認するだけでも、多くの発見があるはずです。

もし、これまで暇な時期に力を注いでいたとしたら、それを責める必要はまったくありません。
多くの会社が同じように悩み、同じように試行錯誤してきました。
大切なのは、これから先、少しずつ力の入れどころを変えてみることではないかと思います。

そして、忙しい時期に出会った新しいお客様に対して、無理のない範囲で、もう一度来ていただくための小さな仕掛けを一つ用意してみる。
それだけでも、一年を通じた経営の景色は、少しずつ変わっていくのではないでしょうか。

経営は、大きな決断の連続であると同時に、こうした小さな気づきの積み重ねでもあります。
ぜひ一度、自社のカレンダーを開いて、忙しい時期と暇な時期を見比べてみてください。
そこには、これまで見過ごしていた、大きなヒントが眠っているかもしれません。

長年にわたって多くの経営者の方とお話をしてきましたが、こうした視点の転換は、決して大きな投資や特別な知識を必要とするものではありません。
むしろ、これまで当たり前だと思っていた習慣を、少しだけ見直してみることから始まります。
今までの努力が無駄だったわけではなく、力を注ぐ場所を少しずらすだけで、同じ努力がより大きな実りにつながることもあります。
焦らず、一つずつ試していく姿勢が、結果として会社を着実に前へ進めていくのではないでしょうか。

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